Short-Lived Musings

つかの間の物思い

ウマ娘屈指の名曲「PRESENT MARCH♪」を忘れないでほしい

ウマ娘」。してますか? してない人はしよう。

 

「うまぴょい伝説」とかいうふざけた歌は知ってる、という人もいるかもしれない。たしかに音楽はウマ娘の大事な要素。これまでも節目やイベントを経るごとに楽曲が生み出され、高品質な3Dモデリングによる踊り付きで公開されてきた。昨日も新シナリオに伴う楽曲が部分的に先行発表されて話題になったばかりだ。

 

じゃあ「PRESENT MARCH♪」という曲は知っているか。

 

知らないか。そうか。

 

プレイしている人ならきっと知っているはず……

 

と言いたいところだが、この曲はライブシアターに登録されておらず、ジュークボックスにも登録されていないのでタイトルの知名度は低いかもしれない。1.5周年のグラライシナリオでゲーム内に登場したことで、初めてそんなタイトルの曲があることを知った人もいるかもしれない。

 

でもこの曲、プレイヤーなら聴いたことあるはずだ。なぜなら、オフボーカルバージョンが競技場のBGMだから。ゲーム内BGMに歌がついたわけではない。ウマ娘のアプリリリース以前からフルコーラスで制作されていて、アプリにオフボーカルが転用されているようだ。それにしてもゲーム出す前からキャラソンCDを12枚出すってどうなの? よくある話なの?

 

私は最初この曲を聴いたとき、びっくりした。他の楽曲と明らかに違う。音楽の知識もないし、音楽的なセンスもないが、なんとなくわかる。たぶん裏拍が強調されている。なんかジャズ的なおしゃれさがある。あと使われている楽器もにぎやか。ビッグバンド編成という奴だろう。

 

原曲を聴いてさらに好きになった。この曲を聴きながら、ウマ娘をプレイするくらいだ。競技場でしか聞けないのはもったいないので。YouTube食レポ動画を見ながらご飯食べるみたいな感じか。

 

ものすごく複雑で遊び心と仕掛けにあふれている楽曲である。5秒おきくらいに聴きどころがある。とにかく己の音楽的無知が悔しくてならない。もっと私の解像度が高ければ、この曲の魅力を存分に語れたはずだし、すごみも理解できたはずだ。以下Spotifyで配信されているものを基準に、つたないながらもこの曲のことを書きたい。

 

open.spotify.com

 

え。すご。HTML編集じゃなくてもURL貼り付けるだけでSpotify埋め込まれるんだ。トラック埋め込み用のタグを取得する必要ないね。

 

 

「ミックスナッツ」先取りのにぎやか幸せアレンジ

まずアレンジから。私は音楽のことはよくわからないが、いろいろなジャンルの要素を融合させているのではないかと思う。

  • 幻想的で壮大なイントロから始まる。これがディズニー映画の主題歌っぽい。「星に願いを」的な、なんとなくイメージするディズニーっぽさ。マーチ→ミッキーマウスマーチってことか(ディズニーとの関連については歌詞のところでも触れる)。
  • Aメロ前にいきなりサビが来る。タイトル通りマーチっぽい力強いビートなのだが、この最初の数十秒のパートに、この曲の全体像が詰まっている。シンコペーションを感じるあたりは、ジャズっぽくもある。ブラスとパーカッションの大規模なアンサンブル。強いビートを特徴とするスイングスタイルのリズムとアレンジ。とりあえずここだけ聴いて、ビッグバンドを活用した「にぎやか幸せポップス」を確認してほしい。Official髭男dismの「ミックスナッツ」が2022年なので、4年先取りしていることになる。ちなみに歌唱的にもアンサンブルで、3人の声優さんが一緒に歌っている。
  • 1番だけ、Aメロでカスタネットが入る(25秒付近と33秒付近)。フィルスペクターやないかい。www.youtube.com
  • Aメロ、コール・アンド・レスポンスのパターンも由緒正しい感じがして好き。
  • 47秒からBメロに入るとベースがピアノに切り替わり、ドラムもいかにもマーチングバンドなスネアドラムに変わる。ピアノの少しずつ音階が下がっていく感じ(とシンセサイザーのホワンホワンした音)が深い森の中(たぶん湖が広がっている)に分け入るような感触。……と思ったら57秒あたりで全楽器が戻ってきて、一気にサビへ連れ去る。2番サビ前だと「ヒュ~~」というSEが入り(2分22秒)、連れ去られる感は1番より強い。このうれしいせっかちさも「ミックスナッツ」先取り感がある。
  • 2番終わり後の間奏(2分41秒から)はビッグバンドによるアンサンブルそのもの。競馬場で自衛隊に演奏してほしい。途中でチューブラーベルまで鳴る。
  • 打って変わって、壮大な物語の終わりを告げるかのようなささやかなアウトロ(4分13秒から)は、これまたディズニー映画のエンディングっぽい。「めでたし、めでたし」という言葉が似合う。

ディズニーへのアンチテーゼ的な歌詞

イントロとアウトロのディズニーっぽさに反して、歌詞は真逆、というか反対命題的である。それがこの曲の面白いところ。たぶんシンデレラとか意識していると思う。「シンデレラストーリー」というワードに象徴的なように、幸せになるために現状の自己を否定するという構図・主張がフィクションにはありがち。でも、きれいな服を着て、権力者の開催するパーティーに出席し、イケメンの王子に求められることが成功だというのは、なんだかちょっぴり、精神的に貧しい。この曲はそんな貧しさにささやかに抵抗する。心のワクワクこそが幸せなんだと。2番のサビが印象的だ。

華麗に変身なんてしなくていい!

今のままで十分素敵だもんね!

どんな道も未来も

まるで Pleasant Pleasant 舞踏会場

踊るように駆けてこう

CHARMING MARCH!

 

おっとりトリオの歌唱

歌っている3人もいい。スーパークリークハルウララマチカネフクキタル。本編では絡みがあまりないが、ウマ娘を代表するおっとりキャラ達。行進よりお散歩が似合う3人だ。でもそれぞれにおっとり具合が違うし、その境地へのたどり着き方も違う。圧倒的強者感によりおっとりしているクリーク、天性のおっとり・ウララ、占いへの傾倒による精神安定込みでおっとりしているフク。ハルウララマチカネフクキタルはゲーム内だと変な声(いい意味で)だが、歌唱ではらしさを残しつつ、歌に合った雰囲気になっている。プロってすごい。

 

余談

・ところでこのタイトル、どういう意味なんだろうね。presentっていわゆるプレゼント、贈り物のことだろうか。どうでもいい話だが、presentには「現在の」という意味もある。march=行進とつながるとなんとなく「現在進行形」というワードが頭によぎる。(現在進行形は英語でpresent continuousというらしい。)

・この曲に限らず、アプリリリース前のキャラソン群(STARTING GATE)はユニークなものがそろっている。キャラの個性を楽曲構成や楽器編成に反映させる努力と工夫が、聴いていて飽きない。

・アルバムアートワークのハルウララかわいい。眉がすごく吊り上がっていて悪そうな表情。勉強に嫌気がさして投げ出しているように見える。フクキタルはこれ絶対鉛筆転がしてるだろ。運に頼らず勉強しなさい。そして二人の問題児を優しく見守るクリーク。アプリで絡まなかった謎メンツの日常が一枚絵に収まっているジャケット写真を眺めるのもSTARTING GATEの楽しみ(季節限定イベントの一枚絵は日常が描かれているわけではない(それもそれでいい))。

 

以上、「PRESENT MARCH♪」について思いつくまま書いた。私が幼少期から音楽をやっていたらもっと説得的にこの曲の魅力を言語化できただろうと思うと悔しい。異国の人を好きになって、片言の外国語で愛を伝えているみたいな気分で書いた。2月の2周年で新シナリオが追加されて、グラライシナリオがプレイされなくなるとともに「PRESENT MARCH♪」が忘れられる、そんな事態に陥らないことを願っている。PRESENT MARCHャンです。PRESENT MARCHャン。……ふふ~、覚えていてくださいね?