Steamで入手可能な、もっと評価されるべき作品を一挙に紹介する。「もっと評価されるべき」という表現が、一見すると自己顕示的な印象を与えかねないことは承知している。しかしながら、長年にわたるインターネット文化への没頭を経て、この言葉が醸成する微妙なニュアンス——すなわち、批評家を気取りつつも、本質的には純粋な同好の士を求める稚気——を的確に表現する代替語句を見出すことができないでいる。
私の個人的な嗜好として、反射神経を要するゲームよりも、頭を刺激する作品に強く惹かれる傾向がある。そのため、ここで取り上げるゲームにも、そのような傾向が色濃く反映されていることをあらかじめ申し添えておく。
- 文字遊戯 第零章(日本語版)
- Dice Tribes: Ambitions
- Mimic Logic
- ウーマンコミュニケーション
- ヤマふだ! にごうめ
- Cento
- Solar Settlers
- Trash of the Titans
- サンセット・ルート
- モン娘ぐらでぃえーた
- Ad Fundum
- Let's! Revolution!
- Sagrada
- World End Diner
- ドールエクスプローラー
- 医療無法人おおやぶ死科クリニック
文字遊戯 第零章(日本語版)
文字だけで構成された独特のアートワークが魅力的。文字を操作して謎を解くゲームシステムは斬新で、操作に慣れも不要。短いながらも奥深いストーリーと世界観で、今年配信予定の本編への期待が高まる良質な無料体験版。
Dice Tribes: Ambitions
ダイス・プレイスメントと資源管理を融合させたボードゲーム風ストラテジー。カバーワークのサイコロキャラがどう見ても「Dicey Dungeon」の戦士の後ろ姿だが、ゲームシステムにおいても同作的ダイス&スロット制が高い戦略性を実現している。部族の育成と野心の達成というテーマ設定が一応ある。英語のみだが分かりやすいUIと温かみのあるドット絵が魅力。ドラフトモードで高いリプレイ性を確保。ランダム性と戦略のバランスが絶妙だが、運要素はどうしてもある。コアゲーマー向けの良質な隠れた名作。
Mimic Logic
公務員試験などで言うところの「判断推理」的論理パズルとローグライク要素を融合した斬新なゲーム設計。元はニコニコのRPGアツマールで公開されていた。宝箱の発言から嘘つきを見抜く推理とダンジョン探索がなぜかマッチ。いかにもツクール製なドット絵の雰囲気が良く、UIも必要最小限で分かりやすい。自動生成で何度も楽しめ、パズルの難易度調整も細かく分かれている。自動生成ゆえに答えを一義的に確定できない問題もあるが、「開示された情報だけでは答えを確定できない」と見抜くことすらゲームシステムに組み込まれている。あってないに等しい気の抜けるストーリーも好き。コアなファンをつかむだろう魅力的な一作。「探偵死神は誘う」という精神的後継作が出ている。
ウーマンコミュニケーション
表層的には一定の評価を得ているように見受けられるが、その本質的価値が十全に認識されているとは言いがたい。真に卓越した作品であれば、その影響力は多様なメディアやプラットフォームを横断して波及していくはずである。例えば、Switchへの移植や、キャラクターの商品化といった現象は、インディーゲームの文化的浸透の一つの指標となり得よう。さらに、文化的影響力を有するインフルエンサーや芸能人、タレントによる推奨は、ゲームの社会的認知を飛躍的に高める触媒となる可能性を秘めている。しかしながら、本作は、上述したような文化的現象をいまだ引き起こすに至っていない。このことは、本作の潜在的価値と現状の評価との間に看過できない乖離が存在することを示唆している。ゆえに、文化的洞察力を有する者の責務として、この作品の真価を広く喧伝し、適切な評価へと導くことが肝要であると考える次第である。
言語と社会規範の複雑な相互作用を探求する野心的な作品。その本質は人間のコミュニケーションの奥深さと、言葉が持つ多義性を鋭く切り取った社会批評である。「風紀委員会」という設定が、社会における言語規制と表現の自由の緊張関係を暗示している。プレイヤーは規範の執行者としての役割を担いながら、同時にその規範の妥当性や、言葉の持つ力について深く考えさせられる。ゲームの進行に伴い展開される物語は、単なる言葉遊びを超えて、人間の意識と無意識、社会の秩序と混沌、そして言語がもたらす結束と分断といったテーマを探求している。「うっかりセンシティブワード」が真に意味するところを追求するプロセスは、まさに現代社会の病理に迫る社会派な旅路。言語、社会、そしてメディア論を融合させた知的挑戦状である。
……というのは嘘である。どこに出しても恥ずかしいバカゲーなので身構えず遊んでほしい。
ヤマふだ! にごうめ
このゲームについては某所でも薦めたので、そこで書いた文章をリライトしておく。
可愛らしい女の子2人が山道を登る「デッキ構築型登山ゲーム」。その魅力は、想像以上に実現されている。ゲームシステムは「Slay the Spire」よりシンプルで、山札から3枚引いて1枚を使用する。カードゲーム特有の攻守の緩急が、山登りのペース配分とうまくマッチしている。山登りをテーマにしているため、体力回復の制限や、踏破と帰還を繰り返すサイクルも自然に感じられる。「のぼる」の数値を積み上げてステージクリアを目指す点も、登山の楽しさを表現している。本作の特徴は、何と言ってもキャラクターのかわいらしさ。女児向けアニメのような愛らしさがある。クリア時には3Dモデルの主人公2人と共に、山頂からの景色を楽しめる。コンパクトながら充実感があり、システム(デッキ構築)、テーマ(登山)、雰囲気(女の子2人の和やかな旅)が見事に調和、それは「ヤマふだ!」というタイトルにも表れている。
Cento
リズムゲームとデッキ構築の要素を融合させた独創的な音楽バトルRPG。BGMに合わせてコマンド入力するバトルシステムが斬新で、多彩なステージと豊富なスキルカスタマイズが魅力。ドット絵のアートスタイルも秀逸だが字がつぶれていて読みにくいかも。リズムゲーム初心者には難易度が高い。ステージ数も今後増えそうでうれしい。両ジャンルのファンに新鮮な体験を提供する意欲作。
Solar Settlers
カードベースの宇宙探索ストラテジーゲーム。一種のワーカープレイスメントだが、彼らの入植(=ワーカーではなくなること)が最終目標なので、入植のタイミングが鍵となる。Race for the Galaxyなどのボードゲーム要素を融合し、1プレイ10ターン、15分で遊べるが深い戦略性を実現。ランダム生成とアセンション的な階層システムでリプレイ性も高い。UIはシンプルだが情報量が多い。宇宙をテーマにしたアートが魅力的。こちらも初心者には難しめ。コアゲーマー向けの良質な戦略ゲーム。
Trash of the Titans
独創的なテーマと戦術性を兼ね備えたターン制SRPG。ゴミ箱を守り、守ったゴミを分配してステータスを増強するのだが、それがテトリスとして表現されるユニークなシステムが魅力。レベルデザインを活かした創造的な戦略が求められる。ドット絵の美しさとUIの分かりやすさも特筆すべき点。戦闘の難易度もちょうどいい。コアなストラテジーファンにおすすめの意欲作。
サンセット・ルート
「大航海時代」の舞台設定に「幸運の大家様」のゲームシステム。目的地選択、キャラ配置、貨物管理を通じてお金を稼ぐゲームプレイは中毒性が高く、新大陸探索というテーマ設定も魅力的。UIはミニマルでわかりやすく、かわいいSDキャラが雰囲気を盛り上げている。単調といえば単調なのだが、長くプレイできる。カジュアルゲーマーにおすすめの良質なインディータイトル。
モン娘ぐらでぃえーた
モン娘育成×ローグライトRPGの組み合わせ。カード選択による育成と簡単操作の戦闘が特徴。戦闘は単調だが、可愛いキャラが魅力的。独特の世界観と定番のシステムでコアなファンを獲得している。
Ad Fundum
ディーゼルパンクな世界観の地下探索ゲーム。巨大メカを操作し、資源を採掘しながら古代の秘密を探る。自動生成された8つの独特な環境が魅力的。メカのカスタマイズ性が高く、掘削と基地運営のバランスも楽しい。UIは情報量が多いが整理されており、ピクセルアートのビジュアルも雰囲気抜群。一方でこちらも、長くやろうとすると単調さが気になる。コアなマイニングゲームファン向け。
Let's! Revolution!
マインスイーパーとローグライトを融合した独創的パズルRPG。美麗なアニメ調グラフィックと戦略性の高い戦闘が魅力。6クラスの個性的な能力と100種以上のアイテム/スキルで自由度も高い。UIは若干ごちゃついているが、難易度調整はうまくいっている。
Sagrada
ステンドグラス製作をテーマにした戦略性の高いダイスドラフティングゲーム。色と数字の制約を満たすパズル要素が秀逸。何といってもアートスタイルが美しい。AIも強く、ソロプレイも充実。運要素はどうしても強い。ボードゲームファン必見の良質な移植作。
World End Diner
ポスト黙示録的な世界観とその割にかわいらしいキャラクターデザインが魅力的。料理・農業・探索の要素をうまく組み合わせた定番のゲームシステム。UIも定番通りで使いやすいが、序盤はコンテンツ不足。アーリーアクセス終了でのアップデートに期待したい面白い作品。
ドールエクスプローラー
ダンジョン探索と戦略的デッキ構築を融合したターン制RPG。かわいらしいキャラと迫りくる毒ガスのコントラストが生む緊張感が秀逸。行動の組み合わせで戦略の幅が広がるが、運要素も強め。UIは若干もっさりしているが、ケモな絵は魅力的。カジュアルなストラテジーファンに推奨。
医療無法人おおやぶ死科クリニック
医療倫理を逆手に取った独創的な悪徳医療シム。汚い「ミミズ病院」。ブラックユーモアとグロテスクな演出が病的な魅力。UIは情報過多気味だがシステムは複雑過ぎない。ばかばかしさと不気味さが同居。正義感の強い人には不向きだが、部落……じゃなかった、ブラックな世界観を楽しめる人にはおすすめ。